2019年度 長期在外研修報告
人文学部現代文化学科
田中英資
これまで取り組んできたトルコにおける文化遺産をめぐる問題に関わる社会人類学的研究をさらに進展させることを目的として、2019年4月1日から1年間ケンブリッジ大学マクドナルド考古学研究所にて、長期在外研修を行った。マクドナルド考古学研究所内にある文化遺産研究センターは、英国における文化遺産研究の拠点となっている。研修中は、以下の研究課題に取り組んだ。
- 19世紀から20世紀にかけての英国におけるトルコ地中海地方の文化遺産に関わる表象についての研究
主としてケンブリッジの大学図書館にて、発掘調査を行った考古学者の記録や、観光ガイドブックなどの記述を確認する作業を進めた。
- 道に焦点を当てた、トルコ地中海地方の観光の発展と変容に関する調査・研究
研究代表者である科学研究費基盤C(課題番号18K11888)の研究課題の調査研究を進めた。トルコ地中海地方におけるトレッキング観光の状況、古道や遺跡の観光資源化の状況について、春、夏、秋と時期を変えて現地調査を行った。
- アナトリア都市文化の歴史的変遷に関する調査・研究
2019年度は分担研究者となっている科学研究費基盤C(課題番号17K02025)の最終年度であり、これまでの調査をまとめた報告書の執筆を進め、10月に刊行した。それと並行し、夏期(8月~9月)に補充調査を実施した。
- トルコ地中海地方の歴史的町並み保存における価値の衝突
2019年度より研究分担者となった新学術領域研究『都市文明の本質:古代西アジアにおける都市の発生と変容の学際研究』の研究の一環で、2019年12月にトルコ地中海地方アンタルヤ旧市街における歴史的町並み保存に関する調査を行った。
特に4月から12月まではトルコでの現地調査が断続的に続き、トルコで集めたデータをケンブリッジで整理しては、またトルコに向かうという生活が続いた。ただ、通常であれば、海外現地調査は夏季や春季の休暇中でもスケジュール調整が難しい。また、現在進めている研究で焦点を当てているトレッキング観光のシーズンである春と秋に現地調査を複数回実施できたのが長期在外研修中の最大の成果と考える。今後は、研究データをまとめ、成果を研究発表や論文として公表していきたい。
トルコ地中海地方での現地調査①(2019年4月)
トルコ地中海地方での現地調査②(2019年10月)
以上