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2011.09.02

大学院

臨床心理学専攻による第1回東日本大震災支援を終えて

2011年3月11日、未曾有の大惨事を前に、長期的な支援を視野に入れて、本学臨床心理学専攻では、当専攻ならではの、臨床心理学的実践を軸においた震災支援の構想を協議しました。

その結果、2011年8月9日~8月21日に渡って、第1回震災支援を実行し、無事終了しました。
当専攻教員2名、院生6名、当支援に参加を希望したボランティアの専門家2名及び他学院生2名を加え、12名のスタッフで、2週間弱に渡る支援を行い、現地で大人延べ123名、子ども延べ117名が支援イベントに参加しました。

支援の内容として、大人に対して「サート(リラクセイション)教室」を開き、子どもに対しては、集団療法の手法を取り入れた「あそぶ寺子屋」を開きました。

支援場所としては、事前に下見に行き、現地の社会福祉協議会等の被災支援機関に企画を説明、
様々な点を考慮し、岩手県宮古市社会福祉協議会のご協力を得、グリーンピア田老仮設住宅地(約500世帯)、崎山仮設住宅地(約40世帯)の2か所に、支援期間中毎日朝10時から午後3時まで活動することになりました。
毎日、すべてが流され、何もない田老の街を通り、がれきの山がそびえる風景を眺めながら仮設住宅地集会所に向かいました。

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田老の堤防と田老の町/道沿いに途切れなく見えるがれきの山

スタッフは8名でしたが、その準備においては、当専攻院生全員が1か月以上の時間をかけて心を一つにして準備に臨みました。
主に、「あそぶ寺子屋」のゲームや遊びの企画、夏なので縁日の企画のための景品の準備など、すべてにおいて、院生の手作りによる準備がなされました。
現地ではボランティアであることを示す必要があり、一般的にゼッケンかけますが、院生のデザインによるT-shirtsをユニフォームとしてこしらえました。
「あそぶ寺子屋」の懸垂幕は、院生が集めたきれいな古布を一つ一つ縫いつなぎ、作りました。

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週に1回の全体討議/みんなの前で企画したゲームを披露

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一つ一つ手作りで準備/2週間かけて懸垂幕を縫い上げた院生たち

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デザインした院生がユニフォームを披露

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壮行会後、院生、教員全員で気合注入の集合写真


現地での「あそぶ寺子屋」は、岩手県宮古市崎山仮設住宅集会所とグリーンピア田老仮設住宅地集会所の2か所で計9日間行われました。
子どもたちは、感覚遊びや走り回るなど身体を動かす遊びで、今まで表現しきれなかった思いを存分に発散、無我夢中に遊びました。ここに来た私たちだけでない、福岡に君たちの応援群がいっぱいいると、院生たちの手作り景品を並べると、みんな真剣に、欲張らず一個ずつ選んでいました。

「あそぶ寺子屋」の最終日は、本来集会所が使えなかったため、予定になかったのですが、子どもたちの熱望に応え、炎天下にテントを張って敢行しました。
みんな大満足、悔いなくお別れすることができました。

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崎山仮設住宅地集会所にかけられた懸垂幕

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フィンガーペインティングがフットペインティングに.../フィンガーペインティングがフェイスペインティングに...

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お外大好き、大人はヘトヘト.../一番お気に入りを、大事に一個選ぶ子どもたち

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予定外の、炎天下での「あそぶ寺子屋」


大人対象の「サート(リラクセイション)教室」は初日から盛況。順番を待つ方が後を絶ちませんでした。
サート(Self-Active Relaxation Therapy;主動型リラクセイション療法)は動作法から発展し、長年動作法の実践と研究をしてきた大野博之教授(現福岡女学院大学大学院人文科学研究科臨床心理学専攻教授)が開発したもので、「自分で動かす(主動)」ことでほどよい柔軟な状態が得られる、新しいリラクセイション療法です。
自分で動かすために高齢者にも負担がなく、誰もでもでき、かつ、ひとりでもできる。こういう手法は震災支援に有効であると考えられ、「サート教室」を支援方法として選んだわけです。

参加者の反応は大変良いもので、まずは不眠の改善、身体の動きの改善、身体の痛みの消去など、すぐにその効果を実感し、その報告をされるリピーターがたくさんいらっしゃいました。
実際いろんなイベントや支援が集会所で行われても、仮設住宅の方々にはうまく伝わりません。
そこで、私たちは「ポスティング(posting)」に出向かいました。一軒一軒訪ねて、チラシをポストに入れ、直接顔を合わせてお誘いすることです。
静まり返った仮設住宅の中にいきなり飛び込み、"ごめんください"と声をかけるのは大きな勇気が要るに違いない、しかし、少しでもみなさまに心と身体が休まる時間を提供したいという一心で、院生たちが2,3グループに分かれ、配慮しながらも積極的に声をかけていきました。
その中で多くの出会いがあり、思いかけない出来事があり、働きかけてみないと分からないたくさんの発見があり、初日以降は、院生たちが自ら"またぜひポスティングに行きたい"と手を挙げていました。

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スタッフ全員稼働、順番待ちのサート教室/ポスティングのために仮設住宅のど真ん中に飛び込む院生たち


20110902_11.jpg第1回の震災支援を終え、果てしない絶望と希望の両方を同時に実感しました。
絶望は現実にあり、希望は人間の心にある。人間がどう生きるかによって、現実は変わる。
その信念を貫き、これからも福岡女学院大学大学院臨床心理学専攻の震災支援を続けていくことに、実際行ったスタッフ、準備した院生、教員みんなが心を一つにした震災支援となりました。

*写真掲載に関して、関係者の了承をいただいています。